ライトファンから見たアーセナル

素人が偉そうにアーセナルの戦術を語ります

私がエジルを評価しない理由

 私はこれまで何度も述べてきているようにエジルよりもラムジー又はミキタリアンを10番ポジションにおいた方が効果的だと思っています。しかし、世間的には、そのように考えている人は稀であるように思えます。

 私がエジルについて厳しい評価をしている理由は単純明快で、4231の10番ポジションにしては得点が少なすぎるということです。これに対して、一般に、エジルは得点は少ないもののそれ以上にチャンスメイクで貢献していると主張されます。私もエジルがチャンスメイクに貢献していること自体は否定するつもりはありませんが、チャンスメイクはどこまで評価すべきことなのでしょうか。


 まず、チャンスメイクとして分かりやすいのがアシスト数です。エジルはプレミアリーグ最速で50アシストを達成しています。アシストはそのままそれが得点に繋がっているものですから、それだけ得点に関与したことになります。したがって、多数のアシストで得点に関与しているエジルは凄いという主張は一見筋が通っているようにも思えます。しかし、これは本当にそうでしょうか。アシストがあろうとなかろうと、1ゴールは1ゴールの価値しかありません。したがって、アシストをゴールと同じ価値のように扱ってしまえば、本来1ゴールの価値しかないものが、得点者の1ゴールとアシストした者の1ゴールの合計2ゴールというように二重に評価されてしまいます。二重評価を避けるためには、アシストのついた1ゴールの価値を得点者とアシストした者とで分配する必要があります。分配方法としては、各ゴールごとに得点者のシュートが良かったのか、アシストした者のパスが良かったのかを判断するのが最も公平でしょうが、それは困難です。そこで、キーパス数に着目したいと思います。キーパスはシュートに繋がったパスであり、昨シーズンのプレミアリーグ上位者では約六本のキーパスのうち一本がアシストになっているようです。これは裏返して言えば、いいパスがあっても決められるのは六本のうち一本だけ、それぐらい得点に繋げるのは難しく、得点した者のプレーには価値があるということになります。そこで、アシストのついたゴールについては、得点者に5/6、アシストした者に1/6の価値を割り振ってみます。そうすると、エジルが最も輝いたとされる2015/16シーズンの19アシストでさえ、3ゴールちょっとの価値しかないことになります。

 また、キーパス数や決定機創出等のアシスト以外の各スタッツについては、数値のとり方の是非やそれがフットボールにおいてどれだけの価値を有するのかアシストよりもさらに怪しくなります。

 以上からすると、アシスト等の各スタッツからエジルのチャンスメイクの貢献が得点力不足を補ってあまりあるという結論を導くことはできません。


 思うに、本当にチャンスメイクにおいて自らのゴールが少ない分以上の貢献をしているのだとすれば、チームの総得点は上がるはずです。そこでエジルが加わる前後のシーズンのアーセナルの総得点について見てみたいと思います。


2016/17 77得点

 in:ジャカ、ムスタフィ

2015/16 65得点

 in:チェフ

2014/15 71得点

 in:サンチェス、コクラン(冬)

2013/14 68得点

 in:エジル、フラミニ

2012/13 72得点

 in:ジルー、ポドルスキ、カソルラ、モンレアル(冬)

 out:ファンペルシ、ソング

2011/12 74得点

 in:ジェルビーニョ、アルテタ、チェンバレン

 out:セスク、ナスリ


これを見ると、エジルが加入してからの三年間において目立った戦力の低下はないにもかかわらず、加入前の年の得点を上回ったのは一度もありません。すなわち、エジルが、加わって逆に総得点は下がっています。四年目の2016/17シーズンにはようやく上回りますが、これはサンチェスが絶好調だったからであり、それまでの三年間も踏まえると、これがエジルの影響とは考えにくいように思えます。


 以上論じてきたところからすれば、エジルは得点が少ない分以上をチャンスメイクで貢献をしているという一般的な主張には賛同しかねます。

 美しいパスからのゴールは見る者を興奮させるので、エジルが人気が高いのは理解できます。しかし、勝つことこだわった場合、エジルが10番ポジションでは厳しいのが現実だと私は思います。



 以前の投稿についてエジル派の方からコメントいただきました。公開せずに返信できないみたいなので、返信できずにいますが、本当にありがとうございます。考え方は違えど、同じチームを応援する者同士で色々な意見を交換できるとうれしいです。

予想基本スターティングイレブン

 四節終わってインターナショナルウイークに突入しました。今週はアーセナルの試合がないので、今日は今後予想されるアーセナルの基本ラインナップについて述べたいと思います。


 これまでのエメリは、おそらく旧来の選手の不満を招くことでチーム崩壊をさせることがないようにするため、ベンゲル体制下の序列は維持しながら自己の戦術の浸透を図ってきました。しかし、今後、エメリがチームを掌握するにつれ、選手選考ももっとエメリの好みが反映されていくと思われます。

 ところで、エメリがベンゲル体制下の序列を維持してきたと話しましたが、全てではありません。いくつか違いがあります。そして、その違いが生じた部分というのは、ベンゲル体制下の序列を維持しようとするエメリにおいて、どうしても許容することができなかった部分ということになるのではないかと思います。そして、その部分とはセントラルミッドフィルダーと10番ポジションになります。

 まず、セントラルミッドフィルダーですが、ラムジーではなく若手の新戦力のグエンドゥージが起用され続けています。ラムジーについては10番ポジションに入れるために外したと考える余地はありますが、10番ポジションにエジルを起用したチェルシー戦ではベンチスタートであったことからすれば、ラムジーはセントラルミッドフィルダーとして求める水準に達していないとエメリにみなされていると考える方が自然でしょう。ラムジーは運動量が並外れている一方で視野は広くなく中長距離のパスは得意ではないのに対し、グエンドゥージは運動量はそこまでではない一方でターンや縦パスを得意とする選手であり、ラムジーよりリンクマン的な能力の高い選手です。エメリはキーパーからショートパスで繋ぐビルドアップを志向しており、そのようなエメリの哲学からすればラムジーはエメリの求めるセントラルミッドフィルダーにはどうしてもマッチしないということでしょう。

 次に10番ポジションですが、エジルが10番ポジションで起用されたのは一回だけで、ラムジーが10番ポジションで起用されてエジルが右ワイドに配置されることが二回ありました。エジルは守備でほとんど闘いませんし、攻撃においても自らゴール前に飛び込んでゴールを狙うことも少ないので、前線からのプレッシングとサイドアタックを信条とするエメリが求める10番ポジションの選手ではないでしょう。

 ラムジーのセントラルミッドフィルダーについては、能力的な問題であり、今後ラムジーがセントラルミッドフィルダーで優先的に使われることは考えにくいです。一方、エジルの10番ポジションについてはエジルの能力というよりかはプレイスタイルの問題であり、エジルがエメリの求める動きに適応しようとするのであればエジルが10番ポジションにとどまる可能性もあるかもしれません。


 以上を前提に今後のラインナップを予想してみると、

ラカゼット

オーバメヤン、ラムジー、ミキタリアン

ジャカ、トレイラ

モンレアル、パパ、ムスタフィ、ベジェリン

レノ

の4231を基本とし、これに強豪相手の場合にはラカゼット又はオーバメヤンを外して左ウイングにイウォビ、空中戦で押してくる相手にはトレイラではなくグエンドゥージなどといった具合に相手に合わせて若干配置を変えることになるのではないかと予想します。


 まず前線ですが、フォワード色の強いウイングがいないアーセナルにおいてはラカゼットとオーバメヤンを同時起用しなければ得点が難しくなってしまいます。そのため、両名が同時起用され、これまでの同時起用時と同じようにセンターフォワードがラカゼット、左ウイングがオーバメヤンになると思います。

 そして、エジルですが、右ワイドでも特に守備面でミキタリアンに及ばず、ラカゼット、オーバメヤンと一緒に起用すれば守備が崩壊してしまいます。そのため、エジルが守備で闘うことをいとわなくならない限り、最終的に控えにまわされることになると思います。

 セントラルミッドフィルダーですが、守備ができるトレイラがファーストチョイスになります。そして、トレイラは、これまで見る限り縦パスも得意としている一方、サイズが小さいことは否めません。とすれば、縦パスが得意で身長はあるものの細いグエンドゥージではなく、左右への展開が得意でサイズの大きいジャカと組むことになると予想します。

 ディフェンダーは、マヴロパノスがムスタフィやパパスタソプーロスよりも若くて大きく、未知数の夢があります。しかし、昨シーズン、僅かな出場機会で退場してしまったことを考えれば、よほどのことがない限りは、カップ戦要員にとどまり、これまでどおりパパスタソプーロスとムスタフィがファーストチョイスでしょう。

 キーパーはレノのプレイをほとんど見れていませんが、多額の移籍金を支払って獲得したキーパーを使わないとは思えませんので、今は環境の変化への慣らし中に過ぎず、いずれレノにスイッチすることになると思います。


 以上が私の予想ですが、皆さんの予想はどうでしょうか。10番ポジションについてはエメリはエジルよりもラムジーを好むと思いますが、ラムジーはいまだ契約延長していません。私はラムジーが大好きですが、以前にも主張したとおりラムジーにミキタリアンよりも高額の週給を支払うことは反対であり、ラムジーがそれ以下の週給で延長しないのであれば冬にでも売却して少しでもウイング等の補強資金とすべきと思います(そもそもレギュラークラスにエジル、ミキタリアン、ラムジーと10番ポジションを最も得意とする選手を高額の給与を払って三名も抱えているのは経済的とは思えません。)。しかし、今のままラムジーを使い続ければ、本人が冬に移籍するメリットを感じなくなってしまい、売却できなくなってしまう可能性がさらに高くなってしまいます。もちろん、エメリとフロント陣も当然そのことは分かっていると思いますが、エメリとフロント陣で徹底して意思疎通を図り、今季に限らない広い視野から今後のラムジーの起用法について考えていって欲しいです。

カーディフ戦 レビュー

スタートは


ラカゼット

オーバメヤン、ラムジー、エジル

ジャカ、グエンドゥージ

モンレアル、パパ、ムスタフィ、ベジェリン

チェフ


の4231でした。


 オーバメヤン、ラカゼット、エジル、ラムジーが入り、イウォビが外されるまでは前投稿での予想どおりでしたが、もう一名外されたのは、グエンドゥージではなく、ミキタリアンでした。ミキタリアンが外されたのは、上記メンバーにミキタリアンを入れた場合の守備面のリスクを踏まえた判断でしょう。ただ、前節、前々節の右ウイングでのミキタリアンのパフォーマンスは悪くはなかったことからすれば、エメリにすればエジル、ラムジーを同時起用するための苦渋の判断だったと思います。


 試合内容ですが、序盤左からのジャカのコーナーキックにムスタフィが頭で合わせて先制しました(1-0)。その後もアーセナルが左サイドを中心に押し気味に試合を進めたものの、徐々にボールを自陣から前に進めなくなっていき、前半終了直前にはジャカのサイドチェンジのロングパスをカットされ、右サイドからのセンタリングから失点してしまいました(1-1)。後半になっても流れが悪かったものの、途中からエジルが中央後方から縦パスを入れていくつかいい形を作り始めると、エジルからの縦パスをラカゼットがワンタッチでオーバメヤンに落とし、オーバメヤンが遠目からカーブをかけた強烈なシュートを決めて勝ち越しました(2-1)。しかし、その後、カーディフに押し込まれ、立て続けにセットプレイのチャンスを与えると、フリーキックをヘッドで繋がれ失点してしまいました(2-2)。同点に追いつかれたところで、グエンドゥージに代わってトレイラが投入されると、アーセナルが押し込む展開が続き、トレイラがラカゼットに縦パスを通すと、ラカゼットがうまく前を向いて角度のないところから強烈なシュートを決めて勝ち越しました(3-2)。その後、アーセナルはエジルに代えてウェルベック、オーバメヤンに代えてミキタリアンを投入して守備を固め、逃げ切り、勝利しました。


 各選手のプレイですが、ワントップに入ったラカゼットは、自らゴールを狙うだけでなく、ワンタッチの落としや、身体を張ったキープなど多彩な動きでチャンスを広げ、結果も一得点一アシストと大活躍しました。

 また、途中出場のトレイラは、的確なポジショニングで相手のカウンターの芽を摘み取りました。カーディフが同点とした直後というのもありますが、トレイラが入った途端にアーセナルがカーディフを押し込む展開が続きました。そして、ラカゼットの決勝点のアシストとなった縦パスを含めいくつか良いパスを出しており、素晴らしいパフォーマンスでした。

 左ウイングに入ったオーバメヤンは、ボールを触る機会が少なかった上、左サイドでボールを持ってもドリブルができるわけでも、良いパスを入れられるわけでもなく、存在感は希薄でした。しかし、後半中盤にスーパーゴールで勝ち越し弾を決めており、ストライカーとしての存在価値を示しました。

 ムスタフィは、コーナーから先制弾を決めたほか、その後もコーナーキックにおいて相手にたびたび競り勝ち、脅威となっていました。また本職の守備でも目立ったミスはなく安定し、ビルドアップもパパスタソプーロスとチェフが危ないパス回しをする中で、無難にこなしていました。

 一方、右ウイングに入ったエジルは前半全く存在感がありませんでした。後半途中から中央三列目あたりから良いパスを何本か出すようになり、オーバメヤンのスーパーゴールの起点になりました。この時間帯のエジルは印象的だったものの、そもそも右ウイングに入ったエジルにはもっと自らゴールに向かうプレイや右サイド深くを攻略するプレイも求められたと思いますし、ベジェリンとの連携もいまいちで、守備においては標準レベルに達しておらず、全体的にみればパフォーマンスが高くはありませんでした。


採点は以下のとおりです。

ラカゼット 8

オーバメヤン 7

ラムジー 6

エジル 6

ジャカ 5

グエンドゥージ 6

モンレアル 5

パパ 5

ムスタフィ 7

ベジェリン 5

チェフ 5


トレイラ 8

ウェルベック 6

ミキタリアン 6


 采配についてですが、エジルを右ウイングに配置したものの、飛び出しがない上、中央に寄るばかりで、相手をサイドに引きつけるわけでも、かといって右バックのベジェリンと連携をとってベジェリンに右サイドをえぐらせるわけでもなく、あまり機能していないように思えました。エジル、ラムジーのどちらかを10番ポジション、どちらかを右ウイングに入れるのであれば、エジルを10番ポジションにしてラムジーを右ウイングにした方がまだ両者の適性に合っている気がします。後半途中からエジルは中央後方から良い縦パスをいくつか通していましたが、それはトレイラがラカゼットに縦パスを通してアシストしたように本来セントラルミッドフィールダーの役割です。右ウイングのエジルが後方から良い縦パスを入れても、本来前線にいなければならないエジルがいないため、マークは分散されていない上、前線に厚みもなく、そこから得点に繋げるのは容易ではないと思います。昨シーズンは、エジルが下がってもラムジーが上がったため、前線に厚みが保たれていました。しかし、これではエジルは守備をしないし、ラムジーは守備に戻りきれず、問題がありました。そのため、エジルが今のオフェンススタイルを変えるつもりがないのであれば、エジル自身がもっと守備で闘って、三列目の攻撃的な役割をこなさせるようになって欲しいと心から思います。そうなれば、ラムジー、ミキタリアンとの同時起用問題は、一気に解決されます。しかも、エジルの広い視野、正確な中距離パス、低リスク思考は攻撃的な三列目にこそマッチしていると思います。本人さえその気になって守備で走って闘うようになれば、再び世界屈指の選手との評価を受けられるようになれると私は思うのですが、どうでしょうか。


 エジルに限らず、より守備的なポジション、中央からサイドへのコンバートは、選手のこだわりやプライドなどもあり、そう簡単にはいかないことは分かっています。エメリには、選手の不満を募らせて選手の離反を招くようなことがないように気を付けつつ、今後も現在の偏った選手層を最大限有効活用できるようなシステムを探していって欲しいです。