データから考える今シーズン序盤のできを左右する選手
突然ですが、優れた選手かそうでない選手かを見極めるにはどうしたらいいでしょうか。選手のプレイ映像を見て判断すればいいでしょうか。私が思うに、プレイ映像を見ての評価は、主観的なものと言わざるを得ず、客観的な評価は難しいと思います。そのことは、試合における選手の善し悪しの点数がレビュー者ごとにまちまちであることからも明らかです。また、プレイスタイルの好き嫌いなどの評価者のバイアスがかかり、好きなプレイスタイルの選手を過大評価したり、嫌いなプレイスタイルの選手を過小評価するおそれも高そうです。したがって、客観的なデータをもとに判断すべきと思います。
では、データは何を見ればいいでしょうか。というのも、例えば、ストライカーであればゴール数というのは大きな指標にはなるでしょうが、守備での貢献、組み立てへの貢献だって重要な要素です。私が思うに、ゴール数が少なくとも、それ以上に守備や組み立てで勝利に貢献できるのであれば、その方がストライカーとして優秀です。そして、ストライカーに限らず、どのポジションであっても、勝つこと、つまりは勝点を得ることに貢献できる選手が優れた選手と言えるのではないでしょうか。
そこで、昨シーズンの各選手の先発出場した試合における1試合平均の勝点を計算してみると、
CB
①ホールディング
5勝4分0敗 1.89P
②ソクラティス
14勝4分7敗 1.84P
③ムスタフィ
17勝6分8敗 1.84P
(CB 16勝5分8敗 1.83P)
④コシェルニー
6勝2分5敗 1.54P
FB
①モンレアル
14勝2分5敗 2.10P
(FB 8勝2分3敗 2.00P)
(CB 6勝0分1敗 2.57P)
(WB 0勝0分1敗 0.00P)
②ベジェリン
11勝4分3敗 2.06P
③コラシナツ
12勝4分6敗 1.82P
(WB 8勝1分3敗 2.08)
(FB 4勝3分2敗 1.67)
④リヒトシュタイナー
5勝2分3敗 1.70P
⑤ナイルズ
5勝0分6敗 1.36P
MF
①ラムジー
10勝2分2敗 2.29P
②ジャカ
16勝6分7敗 1.86P
(MF 16勝5分6敗 1.96P)
③トレイラ
13勝6分5敗 1.88P
④エルネニー
3勝0分2敗 1.80P
⑤グエンドージ
12勝4分7敗 1.74P
FW
①ラカゼット
15勝6分6敗 1.89P
(1ST 9勝4分3敗 1.94P)
(2ST 6勝2分3敗 1.82P)
②オーバメヤン
16勝6分8敗 1.80P
(1ST 6勝1分4敗 1.73)
(2ST 5勝2分3敗 1.70)
(WG 5勝3分1敗 2.00)
③エジル
10勝5分5敗 1.75P
(WG 5勝0分2敗 2.14P)
(10番 5勝5分3敗 1.54P)
④ミキタリアン
10勝3分6敗 1.74P
⑤イウォビ
11勝4分7敗 1.68P
となっています。アーセナルは昨シーズン21勝7分10敗で、1試合当たり1.84Pを獲得していましたから、これよりも高いポイントの選手はチームを引っ張り上げ、これよりも低いポイントの選手はチームの足を引っ張ったことになります(なお、これは同一ポジション間で比較してこそ意味があるもので、違うポジションの選手同士で比較してもあまり意味があるものではありません。)。
これをみると、①本職がウイングの選手がいずれもチームの足を引っ張っていたこと、②右バックのベジェリンとそのバックアッパーであるナイルズとの間には勝点への貢献力に極めて大きな違いがあったこと、③10番をこなせるラムジーとエジルとの間にも勝点への貢献力に比較的大きな違いがあったことが分かります。
したがって、昨シーズンはそもそもウイングを本職とする選手の質に問題があったことが勝点が伸びなかったことの1つの原因と言えそうです。また、終盤のアーセナルの大失速は、ベジェリンの離脱とラムジーの離脱を埋められる選手がいなかったことが原因の1つと言えそうです。
一方、批判の対象になりやすいジャカはむしろチームの勝点を引き上げており、ムスタフィでさえもチームの足をさほど引っ張っていたわけではなさそうです。
今シーズンですが、アーセナルはそもそも質が高い選手がいなかったウイングにぺぺを加え、高パフォーマンスであったラムジーが抜けた10番(及び8番)をこなせる選手としてセバージョスを加えました。これらの選手が活躍してくれることを前提に、昨シーズンのパフォーマンスをもとに今シーズン序盤のアーセナルが最も高いパフォーマンスを発揮できるフォーメーションを考えてみると、
がデータ上は理想になると思われます。
上記フォーメーションをみた場合、ウィークポイントは右バックといえそうです。フットボールは、チーム内で能力が低い選手が勝負に大きな影響を与えるスポーツだと言われています(「サッカー データ革命」参照)。とすれば、今季前半戦は、ベジェリン離脱中の右バックでナイルズがどこまでパフォーマンスを発揮できるかが勝点をしっかり稼げるかどうかのポイントになりそうです。
したがって、今シーズンは、ナイルズが昨シーズンよりも成長しているか、ベジェリン復帰までの間にどれだけの速度で、どこまで成長できるか、ナイルズのパフォーマンスが上がらない場合にチェンバースが右バックとして活躍できるかが注目すべきポイントだと思います。