ライトファンから見たアーセナル

素人が偉そうにアーセナルの戦術を語ります

バーンリー戦から考えるリバプール戦の注目ポイント

 第2節のバーンリー戦は、新戦力のセバージョスの大活躍もあり、バーンリーのハイプレスと放り込みに苦しめられながらもなんとか2-1で勝利しました。また、この試合でのダビドルイスのロングパス、ぺぺの迫力あるドリブルはこれまでのアーセナルに欠けているものだったので楽しめました。この勢いで第3節のリバプール戦も勝って、単独首位に立って欲しいところです。

 さて、相手のリバプールといえば、


 ハイプレスによるボール奪取→速攻→ボールロスト後のカウンタープレス+ハイプレスによるボール奪取→速攻


でガンガンくるイメージです(アーセナル戦以外ほとんど見たことがないので、あくまでイメージです。)。このリバプールに対するアーセナルの戦い方の個人的な注目ポイントは


①ゴールキックからのビルドアップをどうするか

②CBからのロングフィード


です。



 まず、①ゴールキックからのビルドアップについてですが、アーセナルは第2節のバーンリー戦でもゴールキックからのビルドアップの拙さをさらしてしまいました。

 バーンリー戦のアーセナルのゴールキック時のポジションは、基本的に

となっていたと思います。

 アーセナルは、この配置で下記のようにビルドアップを試みました(↗はロングボール)。


①03:10

 レノ→ルイス→モンレアル↗ネルソン オフサイド

②14:20

 レノ↗セバージョス ✕

③49:18

 レノ→ソクラティス→ナイルズ→ぺぺ ✕

④60:52

 レノ→ソクラティス→ぺぺ→ナイルズ→ぺぺ ✕

⑤61:12

 レノ→グエンドージ→セバージョス→ウィロック ○

⑥72:11

 レノ→モンレアル→ウィロック→グエンドージ→ルイス→ソクラティス→ナイルズ→ルイス ✕

⑦74:33

 レノ→ルイス↗オーバメヤン オフサイド


 結果は、上記のとおり、⑤のみ成功で、ほかは失敗でした。なお、⑥については、コラシナツ投入によりバック4からバック3に変更してから初めてのゴールキックで、ダビドルイスが各選手にポジションを指示してそれまでと配置が変わり、ビルドアップはあと少しでうまくいきそうでした。

 これらの動きで気になるのは、①③④⑥といずれもフルバックに戻したところで、次のパスに失敗していることです。普通に考えれば、これはサイドは180度(低い位置で後ろもないので実質90度)しかパスコースがなく、追い込まれやすいことが影響しているのだと思います。


 ここで、リバプールの第2節サウサンプトン戦のゴールキックを見てみます。リバプールとサウサンプトンは、ゴールキック時、基本的に下記のとおり選手が配置されていました。

 リバプールは、まず、GKアドリアンから左CBファンダイクにパスを出し、ファンダイクはLBロバートソンが上がって誰もいない左サイドのスペースの方にドリブルしながらサウサンプトンのプレスの様子をうかがい、次のパスを出していました。

 このリバプールのゴールキックからのビルドアップは、前半は、サウサンプトンの前線の素早いプレスに苦しみましたが、後半にサウサンプトンの前線のプレスの出足が鈍くなると、確実にビルドアップできるようになり、サウサンプトンはリスクの高いプレスを辞めざるを得なくなりました。


 リバプールのアーセナルとの大きな違いは、①左バックのロバートソンが高めの位置にポジションをとっていたこと、②ロバートソンの位置がかなり高くなるなどキックごとに選手配置が変化していたこと(なお、右バックのアーノルドもたまにマティプの右斜め上に位置取るなどしていた)、③中盤の形及び人数です。

 アーセナルのゴールキックからのビルドアップは、ニューキャッスル戦、バーンリー戦をみる限り、①基本的にゴールキック時の選手配置を変えないこと、②左右のフルバックは低い位置をとること、③10番はビルドアップに加えず、フルバックをビルドアップに加えることを特徴としています。しかし、いずれの試合でもうまくいっているとは言い難く、ハイプレスを得意とするリバプール相手にこのままいくのか、作戦を変えるのかに注目です。(個人的には、セバージョスをもっと下げてビルドアップに関与させ、逆にフルバックは上げてビルドアップには基本的に関与させないのがいいと思うのですが、どうでしょうか。)



 次に、②ロングフィード(ここでは、一般的なロングボールとは区別して、後方から前線の「スペース」に向けて蹴られるロングボールという意味で使います。)についてです。バーンリー戦ではダビドルイスのロングフィードが印象的でした。

 ダビドルイスのバーンリー戦08:42頃のロングフィード時の配置は下記のとおりです。

 DAZNで映像を見た感じ、バーンリーのこのときの第一プレスラインであるFWから最終ラインまではわずか約20メートルで、中盤にパスやドリブルができるスペースはほとんどありませんでした。これに対し、ダビドルイスのロングフィードは、バーンリーのフィールドプレーヤー10名全員を飛び越えていっきにチャンスを作りました。バーンリーとすれば、これを避けるためには最終ラインを上げすぎず、最終ラインとGKまたはゴールラインとの距離を短くするしかありませんが、そうすると、第一プレスラインのFWと最終ラインとの距離が伸びて中盤にスペースができ、ボールホルダーは最初のプレスさえかわせば、余裕ができます。ダビドルイスのロングフィード後にバーンリーのFWと最終ラインの距離が長くなったかは映像からは分かりませんでしたが、セバージョスはもちろん、グエンドージやウィロックも中盤で比較的容易にドリブルで運べたのは、ダビドルイスのロングフィードの影響もあったのではないかと勝手に思ってます。

 リバプールもハイプレスをしてくるチームですので、ダビドルイスにはどんどんロングフィードを狙って欲しいと思います。

データから考える今シーズン序盤のできを左右する選手

 突然ですが、優れた選手かそうでない選手かを見極めるにはどうしたらいいでしょうか。選手のプレイ映像を見て判断すればいいでしょうか。私が思うに、プレイ映像を見ての評価は、主観的なものと言わざるを得ず、客観的な評価は難しいと思います。そのことは、試合における選手の善し悪しの点数がレビュー者ごとにまちまちであることからも明らかです。また、プレイスタイルの好き嫌いなどの評価者のバイアスがかかり、好きなプレイスタイルの選手を過大評価したり、嫌いなプレイスタイルの選手を過小評価するおそれも高そうです。したがって、客観的なデータをもとに判断すべきと思います。

 では、データは何を見ればいいでしょうか。というのも、例えば、ストライカーであればゴール数というのは大きな指標にはなるでしょうが、守備での貢献、組み立てへの貢献だって重要な要素です。私が思うに、ゴール数が少なくとも、それ以上に守備や組み立てで勝利に貢献できるのであれば、その方がストライカーとして優秀です。そして、ストライカーに限らず、どのポジションであっても、勝つこと、つまりは勝点を得ることに貢献できる選手が優れた選手と言えるのではないでしょうか。

 そこで、昨シーズンの各選手の先発出場した試合における1試合平均の勝点を計算してみると、


CB

①ホールディング

 5勝4分0敗  1.89P

②ソクラティス

 14勝4分7敗  1.84P

③ムスタフィ

 17勝6分8敗  1.84P

 (CB 16勝5分8敗 1.83P)

④コシェルニー

 6勝2分5敗  1.54P


FB

①モンレアル

 14勝2分5敗  2.10P

 (FB 8勝2分3敗 2.00P)

 (CB 6勝0分1敗 2.57P)

 (WB 0勝0分1敗 0.00P)

②ベジェリン

 11勝4分3敗  2.06P

③コラシナツ

 12勝4分6敗  1.82P

 (WB 8勝1分3敗 2.08)

 (FB 4勝3分2敗 1.67)

④リヒトシュタイナー

 5勝2分3敗  1.70P

⑤ナイルズ

 5勝0分6敗  1.36P


MF

①ラムジー

 10勝2分2敗  2.29P

②ジャカ

 16勝6分7敗  1.86P

 (MF 16勝5分6敗 1.96P)

③トレイラ

 13勝6分5敗  1.88P

④エルネニー

 3勝0分2敗  1.80P

⑤グエンドージ

 12勝4分7敗  1.74P


FW

①ラカゼット

 15勝6分6敗  1.89P

 (1ST 9勝4分3敗 1.94P)

 (2ST 6勝2分3敗 1.82P)

②オーバメヤン

 16勝6分8敗  1.80P

 (1ST 6勝1分4敗 1.73)

 (2ST 5勝2分3敗 1.70)

 (WG 5勝3分1敗 2.00)

③エジル

 10勝5分5敗  1.75P

 (WG 5勝0分2敗 2.14P)

 (10番 5勝5分3敗 1.54P)

④ミキタリアン

 10勝3分6敗  1.74P

⑤イウォビ

 11勝4分7敗  1.68P


となっています。アーセナルは昨シーズン21勝7分10敗で、1試合当たり1.84Pを獲得していましたから、これよりも高いポイントの選手はチームを引っ張り上げ、これよりも低いポイントの選手はチームの足を引っ張ったことになります(なお、これは同一ポジション間で比較してこそ意味があるもので、違うポジションの選手同士で比較してもあまり意味があるものではありません。)。

 これをみると、①本職がウイングの選手がいずれもチームの足を引っ張っていたこと、②右バックのベジェリンとそのバックアッパーであるナイルズとの間には勝点への貢献力に極めて大きな違いがあったこと、③10番をこなせるラムジーとエジルとの間にも勝点への貢献力に比較的大きな違いがあったことが分かります。

 したがって、昨シーズンはそもそもウイングを本職とする選手の質に問題があったことが勝点が伸びなかったことの1つの原因と言えそうです。また、終盤のアーセナルの大失速は、ベジェリンの離脱とラムジーの離脱を埋められる選手がいなかったことが原因の1つと言えそうです。

 一方、批判の対象になりやすいジャカはむしろチームの勝点を引き上げており、ムスタフィでさえもチームの足をさほど引っ張っていたわけではなさそうです。


 今シーズンですが、アーセナルはそもそも質が高い選手がいなかったウイングにぺぺを加え、高パフォーマンスであったラムジーが抜けた10番(及び8番)をこなせる選手としてセバージョスを加えました。これらの選手が活躍してくれることを前提に、昨シーズンのパフォーマンスをもとに今シーズン序盤のアーセナルが最も高いパフォーマンスを発揮できるフォーメーションを考えてみると、



がデータ上は理想になると思われます。


 上記フォーメーションをみた場合、ウィークポイントは右バックといえそうです。フットボールは、チーム内で能力が低い選手が勝負に大きな影響を与えるスポーツだと言われています(「サッカー データ革命」参照)。とすれば、今季前半戦は、ベジェリン離脱中の右バックでナイルズがどこまでパフォーマンスを発揮できるかが勝点をしっかり稼げるかどうかのポイントになりそうです。

 したがって、今シーズンは、ナイルズが昨シーズンよりも成長しているか、ベジェリン復帰までの間にどれだけの速度で、どこまで成長できるか、ナイルズのパフォーマンスが上がらない場合にチェンバースが右バックとして活躍できるかが注目すべきポイントだと思います。

ニューキャッスル戦のゴールキックの考察

 開幕戦であるニューキャッスル戦は1-0でアーセナルが勝ちました。エジル、コラシナツを事件の影響で欠いていた上、補強した選手は獲得から間がなかったり、調整不足であったり、怪我だったりでスタートから使うこともできず、実質的に昨年よりも戦力ダウンした状態であったにもかかわらず勝つことができて良かったです。


 ニューキャッスル戦は勝てて良かったですが、ゴールキックからのリスタートがうまくいっていないように見えるのが気になりました。そこで、今回は、ニューキャッスル戦のゴールキックからのリスタートについて述べたいと思います。なお、ゴールキックについては今シーズンからルールの変更があり、これまでキッカーしかペナルティエリア内に入れなかったのが、ゴールキック側の選手はペナルティエリア内に入れるようになりました。


 ニューキャッスル戦のゴールキック時における各選手の位置関係は概ね下記図のとおりだったと思います。



 アーセナルのゴールキックのうち、ショートパス等でつなごうとしたシーンのボールの動きは次のとおりです。


01:46

 レノ→チェンバース→レノ→ジャカ→ネルソン✕


12:16

 レノ→ジャカ→ウィロック ✕


16:43

 不明→ミキタリアン ✕


39:06

 レノ→チェンバース→ミキタリアン ✕


56:35

 レノ→ジャカ ロング ✕


64:54

 レノ→チェンバース→オーバメヤン ロング ✕


 おそろしいことにすべて失敗でした。このうち最初の2回についてはジャカのパスミスといえるもので、もう少しでつなげそうでしたが、残りについては相手にはめられたと言わざるを得ませんでした。

 私は、ゴールキックを注目して見たことがなく、こんなにつなげないのは選手の配置のミスなんじゃないかと思い、4231を採用していたマンチェスターユナイテッドの対チェルシー戦のゴールキックを見てみました。すると、ユナイテッドの配置は概ね下記図のとおりで、フルバックの位置の高低はあったものの、アーセナルとかなり似た配置になっていました。そのため、アーセナルの選手配置はおそらくオーソドックスなものなのだろうと思います。



 ユナイテッドもゴールキックからの組み立てには苦労しているように見えましたが、


40:41

デヘア→リンデレフ→デヘア→ポグバ→リンデレフ→ペレイラ→ポグバ→マクトミネイ→ショウ


とつないだ場面では、きれいにチェルシーのプレスをかわしました。このときポグバ、ペレイラはいずれもダイレクトでボールを落としていました。


 アーセナルとユナイテッドのプレイなどから考えると、


①アーセナルは基本的にはGKレノから右CBにパスが出される

②右CBの選手が組み立ての舵取りになるので、視野の広さ、パスセンス、パスの正確性が求められる

③ゴールキーパーもパス回しに参加させると効果的

④グエンドージのポジション及びミキタリアンのポジションの選手にはくさびのプレイの正確性が求められる


と思われます。


 この点、まだ、チェンバースの視野、パスセンス、パスの正確性は分かりませんが、ダビドルイスはボールの扱いがうまいと聞いており、このポジションでダビドルイスを使ったときにアーセナルのゴールキックからのリスタートがどうなるのかは知りたいところです。

 また、アーセナルはフルバックの位置が低かったのですが、これだと相手ウイングバックを引き連れて来てしまっていたと思われる上、フルバックの2人、CMの2人の合計4人が同じくらいの高さにいることになり、相手からすればその高さでプレスをかけやすいのではないかと思います。(正直ゴールキックについて考えたことはなく、よく分からないので、今後、フルバックの位置等をほかのチームはどうしているのかよく見ていきたいと思います。)


 ところで、マンチェスターシティでは、ゴールキックのたびに選手の配置が違ったものの、基本はCB1名とGKが観音開きのように軽く開き、そのCBがゴールキックを蹴っていました。アーセナル及びユナイテッドの方法だと、中央エリアにGK、左右のハーフスペースにCBがおり、同一の水平ラインの隣り合ったレーンに3人もいる状態で、無駄に人をかけているように思います。これに対し、マンチェスターシティは、ゴールキーパーをフィールドプレーヤー化して同一の水平ラインの人数を2人に減らし、その分選手を前方に割いており、合理的に思えます。