ライトファンから見たアーセナル

素人が偉そうにアーセナルの戦術を語ります

現実主義的な守備修正でもぎとったドロー(2019/09/30 マンチェスターユナイテッド戦)

 


 2019/09/30のオールドトラフォードでのマンチェスターユナイテッド戦は、前半に1失点したものの、後半に1点を返して、1-1のドローでした。また、understat.comのxGでは1.13-1.70でアーセナルがユナイテッドを上回りました。



 この試合ですが、アーセナルは下記フォーメーションのように4-1-2-3のフォーメーションで試合に臨みました。

前節アストンビラ戦の4-2-3-1から再び3CMに戻したのは、4-2-3-1のユナイテッドの中盤との噛み合わせを狙ってのことだとと思います。


 前々節のワトフォード戦、前節のアストンビラ戦のアーセナルは前線と最終ラインの間が間延びして、結果、相手に中盤を自由に使わせてしまっているのが問題でした。私としては、この問題の解決策として最終ラインの押し上げと前線の積極的な守備参加が必要だと考えていました。この点、この試合のアーセナルは最終ラインの押し上げはほどほどでしたが、前線の選手は守備参加し、守備時は中盤にウイングを加えた4-1-4-1守備ブロックを構成してディフェンスしました。その結果もあってか、ユナイテッドのxGが1.13であることからもわかるようにユナイテッドに大きなチャンスはあまり作らせませんでした。一方で、アーセナルの方もxGは1.70でそこまでチャンスは作れませんでした。

 

 この試合は、双方にミスも多く、上述のとおり双方のxGも低かったことなどから、かつての2強であったアーセナル、マンチェスターユナイテッドの凋落を象徴するつまらない試合だったというのが専らの評判です。しかし、私個人としては、前2試合のワトフォード戦、アストンビラ戦の崩壊していた守備を修正できていたのでストレスなく観戦を楽しめました。

 個人的には攻撃力を低下させずに守備力を高めるためにもっとハイラインを敷いて積極的なプレスをするのが見たかったですが、アウェイのオールドトラフォードでの戦いであって、エメリが裏抜けのリスクがあるハイラインを敷かずにWGを中盤の守備ブロックに組み込むという無難で現実主義的な戦術をとったことは十分に理解できます。これまでほとんど守備をしなかったぺぺも、十分とは言い難かったものの、一応守備に参加しており、少し安心しました。そして、それらの結果、アウェイでの戦いらしい戦い方を実行してオールドトラフォードで一応1Pを取れたので、今節のエメリが採用した戦い方に概ね不満はありません。


 また、この試合ではゴールキックにおいてレノが少なくない回数ロングボールを蹴っていました。ショートパスによるゴールキックからのビルドアップについては、ワトフォード戦で失敗してから変化がみられていましたが、この試合でも危ない場面があってからはショートパスに固執せず、現状に照らして良い判断だと思います。ただ、問題点もいくつか見られました。例えば、下の図は、16:30のレノのゴールキック時の配置を示したものです。

この図のとおり、レノがボールを蹴った瞬間、CB等は低い位置にいました。これはレノが迷った末にショートパスからロングボールに切り替え、CB等が押し上げようとしたのですが、レノがCB等が十分に押し上げる前にゴールキックを蹴ってしまいこのようになりました。これでは、ボール落下地点の密度が低く、セカンドボールを拾いにくくなってしまいます。しかも、レノが蹴ったボールの落下地点にはアーセナルの選手が誰もおらず、セカンドボールどころか、競り合うことすらなく、ユナイテッドボールになってしまいました。レノのロングボールはこのような誰もいないところにいくことが比較的多く、その点はレノ個人の技術として改善して欲しいところです。そして、より簡単にできることとして、レノはロングボールを蹴るならしっかりCB等に指示し、CB等が十分に押し上げてから選手が密集しているところにボールを蹴って欲しいさせて欲しいです。そして、エメリも、アトレティコのようにGKでロングボールを蹴った際にセカンドボールを拾いやすくなる配置を準備すべきです


 

 これで7試合終えて、3勝3分1敗の12P、12得点11失点で、シーズン65.1P、65.1得点59.7失点ペースです。昨シーズンは70P、73得点51失点でしたので、現在は昨シーズンよりも悪い成績となってしまうペースですが、もうすぐ怪我人が復帰してくるので、そこからはアーセナルのポイントも伸びていくと期待しています。



 最後に、この試合の前に正キャプテンとしてジャカ、その他5人のキャプテンとして、オーバメヤン、ラカゼット、ベジェリン、エジルが選ばれました。エメリがジャカをキャプテンに選んだことについて批判が多いですが、在籍年数、年齢、ピッチでの実績、ピッチ内外での言動を踏まえると、選択肢はほぼなかったと思います。しかも、別にキャプテンだから試合に出るというわけでもないのですから、特段騒ぐようなものではないと思います。

 個人的には、ジャカがキャプテンに選ばれたことよりも、5人のキャプテンの中に1年前に開幕直前にパーティーを催して笑気ガスを吸っていたと言われるメンバーからエジル、オーバメヤン、ラカゼットの3名もが選ばれていることの方が規律面で問題のような気がします。

数的不利での逆転劇でも加速するエメリへの批判(2019/09/22 アストンビラ戦)

 2019/09/22のアストンビラ戦は、アストンビラに1点先制された上、前半のうちにナイルズが2枚目のイエローカードを受けて退場したにもかかわらず、後半まずは1点を返し、その直後1点を取られて突き放されたものの、さらに2点を奪って逆転勝ちしました。understat.comのxGでも2.14-1.69でアストンビラを上回りました。

 ただ、このような劇的な逆転勝利にもかかわらず、エメリへの批判は止まず、それどころか、さらに大きくなったように思います。


 この試合ですが、最初は4-1-2-3でしたが、5分ほど経過すると下記フォーメーションのとおり、セバージョスが10番の位置にポジションをとったため、アーセナルはここからナイルズが退場するまで4-2-3-1でした。

sofascoreで見る限り、アストンビラは前節も前々節も今節と同じ4-3-3なので、相手のフォーメーションに合わせてフォーメーションを変えたというよりもアーセナルの試合開始時の4-1-2-3はダミーで、当初から4-2-3-1でプレイする意図だったのではないかと思います。ただし、昨シーズンの4-2-3-1とは違い、アーセナルの守備は、ミドルサード、ディフェンシブサードで4-4の守備ブロックを作るというよりも、4-2-3-1のまま守るといった感じでした。


 アーセナルは、前節ワトフォード戦において最下位相手に中盤を蹂躙され、ファンは監督であるエメリを強く批判するようになりました。そして、今節のアストンビラ戦でも特に前半はアーセナルは中盤を引き裂かれました。そのため、多くのファンが中盤の守備を前節から修正することができなかったエメリに対し強い批判をしています。

 なお、崩壊している中盤の守備ですが、今節では少なくない方がグエンドージを絶賛し、ジャカを退場したナイルズ並みに猛烈に批判しています(skysportsとか。)。しかし、個人的な見解では、守備面に限っていえば、ジャカは、グエンドージよりも守備に貢献していたように思います(もちろん、オフェンス面に限れば、グエンドージは素晴らしかったですし、ジャカの貢献は少なかったと思います。)。少なくとも、あそこまでネガティブトランジションにおいて中盤守備が崩壊しているのはジャカ個人の責任ではなく、組織的な守備の問題と言わざるを得ません。

 したがって、批判すべきはエメリの人選ではなく、エメリの守備戦術です。


 では、エメリの守備戦術の何が問題でしょうか。前回投稿で書いたとおり、前節ワトフォード戦においては、前線が前からプレスにいっても最終ラインが押し上げず、最終ラインがリトリートしても前線がプレスバックしないちぐはぐな守備で中盤が間延びして、中盤で相手に自由にさせているように見えました。そして、それは今節のアストンビラ戦でも続いているように私には見えました。したがって、私の考えでは、①最終ラインの後退のタイミングの早さ、②守備ブロックの押し上げの遅さ、③前線選手の守備での貢献の少なさが中盤の守備の崩壊の主原因ではないかと思っています。


 まず、①最終ラインの後退のタイミングの早さについてです。参考として失点が少ないリバプールと比較すると、アーセナルの最終ラインはネガティブトランジションにおいてすぐに下がりすぎです。ディフェンダーが下がれば、それ以上の速度で中盤、前線が下がらなければ、中盤、前線との間のスペースが広がるのは当然で、そこに相手が簡単に侵入してきてしまっています。裏をとられるリスクはありますが、オフサイドがとれるようになるセンターラインを越えたら勇気を持って下がらずにディフェンスするべきです。もちろん、裏をとられるようなパスを出させないためには中盤及び前線の迅速なプレス及びパスコースの制限などの守備参加も欠かせません。

 次に、②守備ブロックの押し上げの遅さについてです。一旦、自陣ゴール近くまで後退させられても相手がボールを下げた場合にディフェンダー、ミッドフィルダー、フォワードの守備ブロックを押し上げることで、相手が再びゴールに近づくのを防ぐことができます。アストンビラ戦のアーセナルにはそもそも守備ブロックと呼んでいいものが形成されていたといっていいか分からない上、相手がボールを下げても最終ライン、中盤、前線が連動して押し上げないため、立て続けにゴールから近い危険なエリアでボールを持たれてしまっていたと思います。

 最後に、③前線選手の守備での貢献の少なさについてです。今節は4-2-3-1のフォーメーションを取っていましたが、ミドルサード、ディフェンシブサードで4-4の守備ブロックが組まれているようには見えず、かといってコンパクトにして積極的にプレスバックがされるわけでもなく、今節もアタッカー陣の守備貢献が少なかったと思います。ネガティブトランジションで中盤を引き裂かれないためには前線の選手のパスコースの制限、プレスバックが必要不可欠です。このように言うと、優秀なアタッカーは、攻撃で頑張っており、守備でも頑張らせたら負担が大きすぎると反論する人がいますが、リバプールのマネ、フィルミーノは守備でも走り回っています。1点の価値が大きいフットボールにおいてはまずは点を取られないのが先で、その上でそこからどう点を取るかを考えるスポーツといえます。現代フットボールで守備の負担が少なくても済むのは、チームで1人くらいではないでしょうか。アーセナルにはもはやスターティングイレブンから外すという選択が困難な得点力を誇るオーバメヤンがいますので、他のアタッカーはぺぺであれ、今節は出場していないエジルであれ守備でも走りまわらなければなりません。一流監督であるグアルディオラ、クロップ、シメオネに共通する資質は優れたアタッカーにも守備をさせる指導力です。今節は前節までよりはぺぺに守備意識が若干あったようにも見えたので(気のせいかもしれませんが)、今後のエメリの指導に期待です。


 ところで、最近、某サイトにエメリのアーセナルはエメリが就任時に言っていたほどプレッシングをしていないとあるのを読みました。本当にそのとおりで、ビッグマッチはインテンシティが高い試合をすることが多いものの、昨シーズンの就任初期を除くと、ビッグマッチ以外ではチームとして継続的にハイプレスをしている試合というのがほとんどないような気がします。ハイプレスはリスクを伴う戦術ですが、やらなきゃ戦術理解が高まらないので、もっとハイライン&ハイプレスを継続して欲しいところです。


 最後に、一応、今節、エメリが評価できた点も話します。今節はショートパスによるゴールキックからのビルドアップについて、クイックリスタートのように相手の陣形が整う前に行うなどの工夫が若干ありました。そもそもアストンビラにハイプレスをする気はなさそうだったので効果のほどは何とも言えませんが、直前のヨーロッパリーグのフランクフルト戦ではGKのマルティネスがロングキックを連発していたこと考えれば、エメリが前節ワトフォード戦の批判を受けてショートパスによるゴールキックからのビルドアップを改善しようとしているのは明らかで、その点は評価していいと思います。


 これで6試合消化して11得点10失点の3勝2分1敗の勝点11Pで、シーズン69.7得点63.3失点の69.7Pペースです(昨シーズン73得点51失点の70P)。逆転した勢いで上昇気流に乗ることを期待です。

最下位相手のハイリスクロングカウンター戦法の失敗とエメリ解任論の急浮上(2019.09.15ワトフォード戦)

 2019/09/15のワトフォード戦は、アウェイとはいえ、4戦勝ち星なしで監督を早くも解任したワトフォード相手に、しかも前半に2点先取したにもかかわらず、後半に23本ものシュートを浴びて2点を失って2-2で引き分けました。understat.comのxGでは2.83-1.01で完敗で、逆転されずによかったとしか言えないような悲惨な試合内容でした。


 この試合についてですが、①ゴールキックからのビルドアップ、②4-3-1-2採用の是非、③エメリの解任論の3つについて話したいと思います。


 まず、ゴールキックからのビルドアップについてです。このブログでは奇しくもちょうど前回の投稿でゴールキックからのビルドアップの不安について触れましたが、ついに今回のワトフォード戦でレノのショートパスを受けたソクラティスがパスをカットされ、失点しました。このときの選手配置ですが、基本的に次のような配置になっていました(映像に映っていない前線の選手の配置はこれまでのゴールキック時の配置からの想像です。)。


 この日、アーセナルはほぼ同じ選手配置で、次の通り、ゴールキックを行っていました。(→はシュートパス、↗はロングパス、⇒はこぼれ球)


4:23

 レノ→ソクラティス→ナイルズ→グエンドージ ✕

13:08

 レノ→ソクラティス→ナイルズ→ぺぺ→ソクラティス↗エジル→コラシナツ→ジャカ ◯

34:49

 レノ→グエンドージ ✕

35:23

 レノ→ルイス↗オーバメヤン ✕

46:42

 レノ→ルイス↗ぺぺ⇒セバージョス ◯

51:19

 ?→グエンドージ→ナイルズ→エジル ✕

52:54

 レノ→ソクラティス→グエンドージ ✕ 失点

58:06

 レノ→ソクラティス→ナイルズ→ぺぺ ✕

59:53

 レノ→ルイス↗オーバメヤン ✕

63:14

 レノ↗オーバメヤン ✕

64:27

 レノ→ナイルズ→ぺぺ→ナイルズ↗エジル ✕

66:27

 レノ↗オーバメヤン ✕

68:40

 レノ↗オーバメヤン ✕

86:37

 レノ↗オーバメヤン⇒ジャカ→ウィロック ◯


 このうちほぼショートパスのみでビルドアップを成功させたのは7個のうち13:08の1個だけでした。レノ又はダビドルイスが大きく蹴った7個のうち、46:42、86:38の2個については最終的にアーセナルがボールを獲得しているので、大きく蹴るよりも低い確率でした。


 このアーセナルのゴールキック時の選手配置は、この試合のみならず、これまでの試合でもほぼ同じです。そして、そのほとんどのショートパスによるビルドアップに失敗しています。

 アーセナルには空中戦に強い前線の選手がいないため、ゴールキックにおいてショートパスを主体にするのはもちろん構いません。しかし、この配置ではミドルレンジのパスの出しどころが少なく、ショートパスがみえみえで格好のプレスの餌食であり、ショートパスによるビルドアップがいつも失敗に終わるのは構造的な問題も少なくないと思います。以前の投稿で書いたとおり、私はレノのキック精度に疑いを抱いていますが、仮にレノのミドルレンジのパス精度に難があるためにミドルレンジのパスコースを作っていないのであれば、ダビドルイスかジャカにでもゴールキックを蹴らせれば済むだけの話です。なぜ失敗を繰り返しているのにエメリがいつまでも改善措置を取らないのか不思議でたまりません。

 今回のゴールキックが失敗に終わって失点したことで今後ゴールキックの選手配置が改善されるきっかけになればと思います。

 

 次に4-3-1-2の是非についてです。この試合のフォーメーションは以下の図のとおり4-3-1-2でした。


 4-3-1-2は一般論としてはリトリートして4-3で守って、1-2でのロングカウンターに適していると言われています。そして、選手の配置上、中盤中央の守備は固いものの、中盤サイドのスペースは空きやすく、同所からのクロスに対応できるようCBには空中戦の強い選手が求められるとされます。また、前線にはドリブルやペースに優れた選手やパスに優れた10番が向いているとされ、手薄なサイドからのクロスはあまり期待できないため、前線に高さはあまり必要ないとされています。

 この一般論に当てはめると、比較的空中戦に強いダビドルイス、ソクラティスをCBに有し、空中戦は弱いもののペースに優れたオーバメヤン、ドリブルに優れたぺぺ、パスに優れたエジルを前線に有するアーセナルには向いているフォーメーションのようにも思えます。

 しかしながら、4-3-1-2の唯一の成功例と言えば、2004-2005シーズン頃のACミランでしょうが、その当時のミランはカフー、スタム、ネスタ、マルディーニの最終ラインに加え、ガットゥーゾという中盤の潰し屋もおり、守備に秀でているとは言い難いアーセナルの守備陣とはまったく異なります。しかも、その当時よりも戦術が発達した現代フットボールにおいては4-3の守備ブロックの弱点であるサイドのスペースから徹底的に攻められます。とすれば、アーセナルのメンバーで4-3で守り切るのは至難の技で、1-2のオーバメヤン、ぺぺ、エジルの守備参加が必要不可欠です。しかし、試合を見る限り、オーバメヤン、ぺぺ、エジルらに守備が求められていたようには見えず、往年の4-3-1-2のロングカウンター戦術そのものでした。

 現在のアーセナルで、往年の4-3-1-2のロングカウンター戦術を行うことは、失点のリスクが極めて高く、DAZNの解説者が言っていた「肉を切らせて骨を絶つ」と言えば聞こえは良いですが、要は、ギャンブル戦術と言えます。このようなギャンブルを、アンフィールドでのリバプール戦のようにまともに戦っては勝ち目が低いような試合でするのはまだ分かりますが、アウェイとはいえ、新監督を迎えたばかりの最下位ワトフォード相手にする必要があったでしょうか。そして、幸運にも2点先取してハーフタイムを迎えたにもかかわらず、後半まで4-3-1-2でハイリスクを抱える必要があったでしょうか。私は、そうは思いませんし、ほとんどのファンが同じ考えだと思います。

 もっとも、エメリの狙いは元々ロングカウンターではなかった可能性もあります。すなわち、オーバメヤン、ぺぺをサラー、マネ、エジルをフィルミーノに見立て、リバプールのようなプレッシングフットボールをしたかったという可能性です。しかし、その場合、最終ラインは高い位置をキープし、フィルミーノ役のエジルがプレスバックをして相手を追い回す必要がありますが、最終ラインはすぐに下がっていましたし、エジルにプレスバックの意識はほとんどなったので、プレッシングフットボールをしようとしていた可能性は低そうで、やはりロングカウンター狙いだったと考えるべきです。

 そして、実際の試合では前線がたまに前プレスしても最終ラインが押し上げず、最終ラインがリトリートしても前線が高い位置に残るちぐはぐさで、間延びした中盤サイドをワトフォードに自由に使われてシュートを次々と打たれ、終盤は守備で疲弊し切った選手が動けないような目を覆いたくなるような惨状でした。

 リバプール戦の4-3-1-2、トッテナム戦の4-1-2-3に続いて4-3-1-2が採用されたということは、エメリは、今シーズンは3センターを採用しようと考えているのかもしれません。しかし、どちらであっても、3センターの場合は、中盤サイドが弱いため、ウィングを守備に加えた4-1-4か4-5ブロックを作るか、リバプールのようにハイラインで前線にプレスバックさせなければ中盤が崩壊してしまうと思います。3試合のいずれも結果が出ていませんが、今後もエメリが3センターを継続するのか1つの注目ポイントになりそうです。

 

 最後にエメリの解任論についてです。この試合の内容があまりに悪かったためと思いますが、この試合後、エメリを解任すべきという意見がファンの間で急激に強まりました。私もゴールキックからのビルドアップがいつまでも改善されないことや守備組織が構築されないことなどから、エメリの監督としての技量に疑いを感じ始めています。

 私は、ベンゲルがチャンピオンリーグを逃したときにベンゲル解任支持派になりましたが、その際、私は新監督には戦術の柔軟性を望んでいました。しかし、それは、確固たるベースを持ちながら、対戦相手に応じて攻めどころや攻撃意識、プレス開始地点、ライン設定、選手起用などのディテールを変更することであって、カメレオンさながらにチームカラーまで変えてしまうような戦術の変更ではありませんでした。私のほかにも同じような思いを持っている人は多いのではないでしょうか。

 しかも、今シーズンはこれで5試合終えて2勝2分1敗の勝点8Pで、昨シーズンのラスト14試合が7勝2分5敗の勝点23Pであることから、エメリのラスト19試合は勝点31Pであって、これはシーズン62Pペースです。これは昨シーズンのマンチェスターユナイテッドよりも悪い成績になります。

 もっとも、主力であったモンレアルが移籍し、ベジェリンが怪我で長期離脱中で、現在のコラシナツ、ナイルズのフルバックコンビはプレミアリーグ最弱の守備力ではないかと疑いたくなるレベルですし、左ウイングはミキタリアン、イウォビの移籍によりオーバメヤンをセンターにすると計算できる選手がいない上、ダビドルイス、セバージョス、ぺぺと3人もの新加入選手が並ぶスターティングイレブンに細かな連携は期待できないなど、エメリを擁護できる点は多々あります。そのため、現時点でエメリを解任するべきだとは思いません。しかし、怪我人が復帰し、新戦力も慣れてくるシーズン半分が経過した頃になっても状況が変わらないようであれば、アーセナルは早目に決断した方がいいかもしれません。