ライトファンから見たアーセナル

素人が偉そうにアーセナルの戦術を語ります

現実味を帯びるエメリ解任(2019/11/3 ウォルヴァーハンプトン戦)

 


 2019/11/3のウォルヴァーハンプトン戦は、前半に先制したものの、後半に1点を返され、1-1の引き分けでした。Understat.comのxGでは1.03-1.51でアーセナルが負けていました。

 エメリにはファンからの解任要求が高まっており、メディアもサンジェイがモウリーニョと会食したなどというゴシップまで出して盛り上げようとしている状態で、エメリ解任がいよいよ現実味を帯び始めてきました。



フォーメーション

 

 今節は上記フォーメーションとおり、4-3-1-2でした。4-3-1-2の採用は3節のリバプール戦(1-3✕)、5節のワトフォード戦(2-2△)に続き、今季3回目です。

 スターティングイレブンには、前節ファンと衝突したジャカが外れてトレイラが入りました。また、いまだ周囲との連携が不十分のぺぺが外れて一部ファンから強い要望があったエジルも入りました。

 昨シーズンは4-3-1-2の採用を希望するファンも多かった印象ですが、これまで4-3-1-2が機能したという記憶はなく、今節4-3-1-2 が採用されたのは驚きでした。



守備戦術

 アーセナルは、ディフェンシブサードでの守備においても4-3-1-2のフォーメーションを変えず、4-3の守備ブロックで守るという守備戦術でした。

 73'にサカを投入してからは、4-2-3-1にフォーメーションを変え、4-4の守備ブロックに移行しました。40'まではxGが0.86-0.28でしたが、ここからウォルヴァーハンプトンに押され、73'にサカを投入する頃には1.01-0.83まで追い上げられていたので、サイドの守備に難があった4-3の守備ブロックを4-4の守備ブロックに変えようとしたこと自体は十分に理解できます。

 

 この試合アーセナルは24本のシュートを打たれていますが、シュートゾーンをみると、ボックス外からのシュートが38%と多いです。これまでの傾向からしてもおそらくエメリのアーセナルは外からのシュートは打たせて構わないという守備戦術だと思われます。

 


攻撃戦術

 攻撃は最近の試合よりもショートパスで繋げる意識が高く、Sofascoreによれば成功パス数は465本(86%)で、前節のクリスタルパレス戦の362本(82%)を大きく上回りました。

 また、次の図はWhoScoredによる今節の平均ポジションで、前節のクリスタルパレス戦(前節の投稿参照)と比較してエジルを含めたFW陣とMF陣の間の距離が顕著に縮まっていることが分かります。

 

これは良い傾向だったと思います。

 アーセナルのシュートゾーンはボックス内からのシュートが90%と相手に比べると割合が多いです。守備戦術と合わせて考えると、エメリアーセナルは、確率の低い位置からのシュートは効果的でないとの考えがあり、攻撃で確率の低い位置からのシュートを控え、守備では確率の低い位置からのシュートを打たせようとしているのではないかと思います。



選手交代、采配

 60'にラカゼットをマルティネリに代えました。この時点でxGは0.96-0.74まで追い上げられていたので、ラカゼットをマルティネリに代えたのは、守備意識の高いマルティネリを入れることで守備を強化するためと思われます(前節の1失点目はラカゼットの守備意識の低さも原因の1つです。)。

 続いて、73'にトレイラをサカに代えて、オーバメヤンをストライカー、サカ、マルティネリをサイドにした4-2-3-1に変更しました。サカを入れたのはフォーメーションを4-2-3-1に変更し、ディフェンシブサードでの守備において4-4の守備ブロックを作れるようにして守備を強化しようとするもので理解できます。しかし、その交代相手がトレイラだったのは、トレイラに疲労でも見えたからでしょうか。トレイラは攻守のバランスをとれる選手で、サカとの交代はグエンドージかセバージョスが妥当だったように思います。

 87'にティアニーをコラシナツに代えた意図は分かりませんでした。いずれにしても、ベンチにぺぺが残っているにもかかわらずぺぺを使わなかったことからすれば、エメリは高いリスクを冒してでも勝ちに行く必要はないと判断したのだと思います。



エメリ解任について

 今回のホームでの引き分けでますますエメリ解任論が強くなりました。しかし、いまだ成績は4勝5分2敗に過ぎず、5位にとどまっています。確かに試合内容が改善されているようには見えないものの、エメリはバレンシア(6位、3位、3位、3位)、セビージャ(5位、5位、7位)において戦力に照らせば比較的良好な結果を残しており、主観よりもデータを信じる私としてはまだエメリ支持派です。

 今節のアーセナルはエジルが入った影響でこれまでよりもパスが回っていましたが、それでもパス精度というよりも息が合わずにパスが失敗に終わることが多くありました。今季のアーセナルは主力級の選手の出入りが激しく、これによる連携の低下は私たちが思っているよりもチームパフォーマンスに大きな影響を与えているのではないかと思います。今節のアーセナルのスターティングイレブンを見てもダビドルイス、ティアニー、セバージョス、チェンバースの4名は昨シーズンいなかったメンバーですし、レノ、ソクラティス、グエンドージ、トレイラの4名は昨シーズンに加わったメンバーにすぎません。一方、現在アーセナルよりも上の3位にいるレスターは、スターティングメンバーは昨シーズンとほとんど変わっていません(なお、大幅にメンバーが変わっても4位につけているチェルシーのランパードは「凄い」ってことで解釈しています。)。レスターとの勝点の差はまだ6でしかなく、今後連携が良くなれば挽回は十分可能と思います。

 監督解任を煽るのが大好きなマスメディアの論調もあってエメリアウトの声が勢力を増していそうですが、実際にエメリが解任されるまではメディアの格好のネタになるだけで、エメリの選手との関係を難しくするなど、アーセナルの成績にはマイナスにしか作用しない気がします。


 これで11試合終えて、4勝5分2敗の勝点17P、16得点15失点です。これはシーズン38試合だと、58.7P、55.3得点、51.8失点になるペースです。昨シーズンは、70P、73得点51失点でしたので、失点以外は昨シーズンよりも大きく悪化するペースになります。

 次節の3位レスター戦はアウェイとはいえ、負けられない一戦となりそうです。

繰り返される拙攻(2019/10/27 クリスタルパレス戦)

 2019/10/28のホームでのクリスタルパレス戦は、前半9'までにコーナーキックから2点を先取したものの、2点を返され、引き分けに終わりました。Understat.comのxGは1.54-1.78でアーセナルが負けていました。


フォーメーション

 今節のフォーメーションは守備時の配置を重視すれば上記のとおり4-4-2でした。ただし、攻撃時は4-3-3に近い配置となっていました。

 スターティングイレブンにはついにLBティアニーがコラシナツに代わって名前を連ねました。これでRBチェンバース以外はエメリの考えるベストメンバーだったのではないでしょうか。


守備戦術

 クリスタルパレスのサイドアタックを警戒してか、4-4-2の守備ブロックを作って守るという守備戦術でした。プレミアリーグでアーセナルの4-4の守備ブロックを見るのは久しぶりでした。ぺぺとセバージョスの連動性が怪しかったですが、これまで失点が多かった以上、4-2-3-1のまま中盤サイドのスペースを開けて守るより良いと思います(もっとも、今節も2失点しています。)。


攻撃戦術

 ボール奪取からの速攻を基本としていました。Whoscoredによれば、攻撃サイドは右サイド41%、中央26%、左サイド33%でやや右サイドに偏っていましたが、RBチェンバースのクロスは1/7で正確性を欠いており、主観的にもあまり得点の可能性は感じられませんでした。チェンバースはマークを外しきれていないことが多い上、クロスも単調になりがちなので、RBベジェリンの復帰が待たれます。なお、ぺぺは、クロスが5/13であるものの、これはコーナーキックを含めての数字であり、流れの中では良いクロスはほとんどなかったと思います。

 次の図はWhoscoredによるアーセナルの各プレイヤーの平均ポジションです。

 この図からすると、攻撃時に右サイドのぺぺはアタッカーとして前に出て、左サイドのセバージョスはミッドフィルダーとして後ろに残って4-3-3のような形でプレイしていたことがうかがえます。

 次の上図はアトレティコマドリード(2019/10/26ビルバオ戦)の各プレイヤーの平均ポジション、下図はリバプール(2019/10/27トッテナム戦)の各プレイヤーの平均ポジションです。

 これらと比較すると、アーセナルはMFラインとFWの距離が遠く、MFとFWの間がぽっかり空いており、前線3人が孤立していたことがうかがえます。試合展開や戦術にもよるのでここから直ちに結論を導けるわけではないですが、この試合の(も?)アーセナルはMFとFWの距離が遠すぎたように思えます。

 よくエメリがトレイラを10番的に使うことが批判されますが、トレイラは相手の最終ラインとMFラインの間に潜り込むのが比較的うまい選手であり、セバージョスを含め他にそういったプレイが得意な選手が少ないためトレイラが10番的な役割で使われることが多いのかもしれません。

 今後、アーセナルの攻撃を活性化するためにはFWのいずれかが低い位置をとったり、MFのいずれかが高い位置を取るなどして、相手ライン間を有効利用することをが欠かせないと思います。


選手交代

 同点に追いつかれてからの61'にジャカをサカに代え、75'にティアニーをコラシナツに代えました。ジャカをサカに代えたのは攻撃的にするため、ティアニーについては怪我明けで3日前にもELにフル出場していたので大事をとらせたためと思われます。このように2枠は使ったものの、最後の1枠については使いませんでした。主なベンチメンバーはマルティネリ、ベジェリン、トレイラといったところで、誰と誰を交代させれば効果的かは確かに難しい判断ですが、チェンバースのクロスが正確性を欠いていた以上、交代枠を使わないよりはベジェリンと交代させても良かったのではないでしょうか。


総評

 とにかく、拙攻で攻める形ができていないです。しかも、速攻の精度が低いにもかかわらず 、速攻にこだわろうとするため無駄なロストが多いという印象です。オーバメヤンは足が速いと言われるものの、ドリブルは得意ではなく、ボールキープも苦手なのでロングカウンター向きの選手ではまったくないと思うのは私だけでしょうか。

 また、ライン間で受けれる選手も欲しく、ラカゼットがもっと下がるプレイを増やすか、ラストパスも期待できるセバージョスにもっとライン間に入り込むプレイを増やして欲しいところです。


 これで10試合終えて、4勝4分2敗の勝点16P、15得点14失点です。これはシーズン38試合だと、60.8P、57.0得点、53.2失点になるペースです。昨シーズンは、70P、73得点51失点でしたので、すべての面で悪化しているペースになります。厳しい状況であり、何か好転するきっかけが欲しいところです。

ファンとしてのモラル

 2019/10/27のクリスタルパレス戦では、61'にジャカがサカと交代になりました。その際、一部のファンがジャカにブーイングをし、それに怒ったと思われるジャカが耳に手を当て何を言ってるのかというポーズをした後、ユニホームを脱ぎ捨てながらベンチではなくドレッシングルームの方へ去って行きました。

 ジャカはビルドアップした状態で、ミドルサードからオフェンシブサードのライン間にいる味方選手に速い縦パスでボールを送り込むのを得意としている選手で、速攻を狙う最近のアーセナルのプレイスタイルに馴染めておらず、十分なパフォーマンスを発揮できていませんでした。とはいえ、そこまで酷いパフォーマンスというわけではなかったものの、一部のファンは、ジャカを責めるべきではないことまでもジャカを批判するなど、常軌を逸している状況でした。

 そんな中、今回の件が起こりました。今回の試合でジャカは特段パフォーマンスが低かったわけではなく、彼は彼なりに闘っていたと思います。そんな中でジャカにブーイングをした人らは一体何がしたいのでしょうか。味方選手にブーイングすることで選手やチームのパフォーマンスが上がるでしょうか。普通に考えれば下がるだけです。しかも、これらの一部のファンの行為はアーセナルのブランドをも傷つけています。現在、アーセナルは斜陽のクラブであり、建て直しを図っている最中です。にもかかわらず、一部とはいえ、ファンがこのようなことをすれば、有望な選手がアーセナルというチームに来ることを躊躇しかねません。ブーイングした一部のファンは、その行為が選手やチームのパフォーマンスを下げるだけで、アーセナルのブランドをも傷つけていることを自覚すべきです。そして、そういったブーイングを面白おかしく騒ぎ立て、そういった一部のファンを助長する人も同じだと思います。本当にアーセナルを応援し、サポートしたいのであればパフォーマンスを理由とした味方選手へのブーイングなどということはすべきではないですし、そのような行為を許すべきではありません。